ヨルシカ&ボカロはかく語りき   歌詞とMVを徹底考察!

ヨルシカやボカロの曲の歌詞やMVの考察を通して、その曲の真髄に迫る…!!

【ヨルシカ - 『ただ君に晴れ』】MV&歌詞考察第3弾! ヨルシカといえばこの曲!!

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歌詞考察3弾は【ヨルシカ】の大ヒット曲『ただ君に晴れ』...!



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【ヨルシカといえばこの曲!】

 


今回歌詞考察を行っていく『ただ君に晴れ』は、2018年5月4日に公開され、
その5日後に発売された2ndミニアルバム『負け犬にアンコールはいらない』に収録されています。

 なんとこの曲、2020年8月にYoutube再生回数1億回を突破しました!!

2021年8月29日の時点での再生回数は1.4億超!!
…ヨルシカの名を全国に轟かせた超ヒット曲ですね。
ちなみに他に億再生している曲は『だから僕は音楽を辞めた』『言って』です。
 
ところで、何故『ただ君に晴れ』というタイトルなのか知っていますか?
実はこれにはとても心に響く意味が込められているのです...。
後に語っております、お楽しみに。

 

歌詞全体を通して大人になった「僕」が過去の思い出にいる「君」を追憶しています。
「あの夏の君」とはMVに出てくるセーラー服を着た少女ですね。
ここまで簡単に前提知識を抑えたうえで、早速ヨルシカの代名詞ともいえる『ただ君に晴れ』の考察に入っていきましょう!

 

【歌詞】

夜に浮かんでいた
海月のような月が爆ぜた
バス停の背を覗けば
あの夏の君が頭にいる

だけ

鳥居 乾いた雲 夏の匂いが頬を撫でる
大人になるまでほら、背伸びしたままで

遊び疲れたらバス停裏で空でも見よう
じきに夏が暮れても
きっときっと覚えてるから

追いつけないまま大人になって
君のポケットに夜が咲く
口に出せないなら僕は一人だ
それでいいからもう諦めてる

だけ

夏日 乾いた雲 山桜桃梅 錆びた標識
記憶の中はいつも夏の匂いがする

写真なんて紙切れだ
思い出なんてただの塵だ
それがわからないから、口を噤んだまま

絶えず君のいこふ 記憶に夏野の石一つ

俯いたまま大人になって
追いつけない ただ君に晴れ
口に出せないまま坂を上った
僕らの影に夜が咲いていく

俯いたまま大人になった
君が思うまま手を叩け
陽の落ちる坂道を上って
僕らの影は

追いつけないまま大人になって
君のポケットに夜が咲く
口に出せなくても僕ら一つだ
それでいいだろ、もう

君の想い出を噛み締めてるだけ

                                           作詞: n-buna

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歌詞から作成したワードクラウド

【歌詞・MVの意味と解釈】

【1番】

に浮かんでいた
海月のようなが爆ぜた
バス停の背を覗けば
あの夏の君が頭にいる

だけ

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夜に浮かんでいた
 海月のような月が爆ぜた
MVでは海月<クラゲ>といっていますね。
デジタル大辞泉<海月とは - コトバンク>によると、他に

かい‐げつ【海月】

 海上の空に見える月。また、海面に浮かんでいる月影。
「山の端の月と共に、―も入りにけり」〈謡・
 クラゲの別名。〈日葡
といった意味があるようです。
湿度が高くもやっとした夏に、海上に佇む朧月が想像されます。
そして

バス停の背を覗けば
 あの夏の君が頭にいる

と、現在の「僕」が当時の少女の記憶を思い出しています
 
「だけ」

「僕」には少女はただ記憶にあるだけ。
でもこの「だけ」は素直に「ただ~だけだから」という意味なのでしょうか。
いやいや、そんなことないよ、と
「僕」の記憶に彼女がしっかり残っていることを暗に示しているように感じられます。

 

鳥居 乾いた雲 夏の匂いが頬を撫でる
大人になるまでほら、背伸びしたままで

遊び疲れたらバス停裏で空でも見よう
じきに夏が暮れても
きっときっと覚えてるから

鳥居 乾いた雲 夏の匂いが頬を撫でる
 大人になるまでほら、背伸びしたままで
ここは二人が学生だった頃の記憶ですね。
子供と大人の狭間に生きる年ごろ、
届きそうで届かない「大人」に憧れていた懐かしさ。
 
そして
遊び疲れたらバス停裏で空でも見よう
バス停は先ほども出てきました。
登下校で一緒だったり待ち合わせの目印だったり。
きっと二人の青春が詰まった場所なのでしょう。
 
「じきに夏が暮れても
 きっときっと覚えてるから」
「僕」が生きている現実では夏が過ぎ去ろうとしても、
「僕」の記憶の中では「あの夏の君」はずっと生きている。
二度と二人の道が交わることはないかもしれないけれど、
やはり「僕」にとって「君」は忘れられない存在なのですね。
 

【サビ1】

追いつけないまま大人になって
君のポケットに夜が咲く
口に出せないなら僕は一人だ
それでいいからもう諦めてる

だけ

追いつけないまま大人になって
いつまでも「」がいた夏を思い出してしまう「」。
あの頃から年を重ねて世間的には「大人」になったものの、
「僕」の心はいまだに「あの夏の君」に囚われています。
 
「君のポケットに夜が咲く」
なんとも美しい語感。「夜が咲く」とはおしゃれな響きですね。
ところでこの「夜が咲く」とはどういう意味でしょうか。
ここでは「夜」=「失われた記憶」=「忘却」と仮定してみます。
「ポケット」とは「僕」には見えない「君」の内側の部分であり、
「夜が咲く」とは「君」から「僕」記憶が失われていくこと
つまりは、「僕」から見た「君」がどんどんと遠ざかっていくこと 
を意味していると考えられます。
そうすると、出だしが
夜に浮かんでいた
 海月のような月が爆ぜた
であることに立ち戻ってみると、

「僕」の忘却の彼方にいた朧げな「君」という存在を、ぱっと思い出した

ことがきっかけで、曲が展開されているとも考えられます。
 
「口に出せないなら僕は一人だ 
 それでいいからもう諦めてる
 だけ」
口に出せないとは、
「僕」から「君」が遠ざかっていくことを否定できなかった
ということでしょう。
その結果、行きつく先は孤独。
でもそんな風になってしまうのは仕方ない、と「僕」は受け入れてしまっています。

 

【2番】

夏日 乾いた雲 山桜桃梅 錆びた標識
記憶の中はいつも夏の匂いがする

写真なんて紙切れだ
思い出なんてただの塵だ
それがわからないから、口を噤んだまま

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「夏日 乾いた雲 山桜桃梅 錆びた標識
 記憶の中はいつも夏の匂いがする」
気になる花、「 山桜桃梅 (ユスラウメ) 」が出てきました。
山桜桃(ゆすら)とは?意味や読み方をご紹介!山桜桃梅との関係は? | BOTANICA
よると、その花言葉
        「郷愁」「輝き」「貴び」「ノスタルジー
のようです。
思い出す季節はいつだって「君」と過ごした「あの夏」なのですね。
 
「写真なんて紙切れだ
 思い出なんてただの塵だ」
こう思うことができれば、「君」に囚われずに済む。でも...
「それがわからないから、口を噤んだまま」
写真や思い出は「僕」にとって大切なもので、忘れることなんてできない。
だからこそ、言えなかった。
何を?
ちょっと不器用な「僕」が伝えたかった事...それは
後で伏線回収します。
そして...
         「絶えず君のいこふ 記憶に夏野の石一つ」
このフレーズは俳人正岡子規
            「絶えず人いこふ夏野の石一つ」
という俳句が元になっています。
 夏の野原の真ん中に石が一つ。人々は絶えずその石に座って休憩する。
といった風景を詠んだもの。
これを歌詞に当てはめると、

「僕」の記憶にはあの夏の野原の石があって、そこで君はいつだって腰を下ろして憩いの時を過ごしているんだ

という意味になります。
そしていよいよサビへ。

【サビ2】

俯いたまま大人になって
追いつけない ただ君に晴れ
口に出せないまま坂を上った
僕らの影に夜が咲いていく

やはり「僕」は「君」に追いつけないままで。
でもここで「僕」は「ただ君に晴れ」タイトルと同じフレーズをこぼしています。
そしてまたもや何かを口に出せない「僕」。
 
「僕らの影に夜が咲いていく」
これまでの考察からいくと、「夜」=「忘却」なので、ここでも「君」との記憶が失われていくことがわかります。
では何の記憶なのか、というと「僕らの影」のもの。
n-bunaさんが古典に精通していることを踏まえ、「影」について古語辞典を参照してみます。
影の意味 - 古文辞書 - Weblio古語辞典
によると、「影」には
(心に思い浮かべる)顔・姿。面影。

出典源氏物語 桐壺

「母御息所(みやすんどころ)は、かげだに覚え給(たま)はぬを」

[訳] 母である御息所のことは、面影さえおぼえていらっしゃらないが。



という意味があります。
このことから、「僕らの影」=「思い出の中の過去の二人」といえます。
君のポケットだけでなく僕らの影でも夜が咲いてしまうのですね。

【ラストサビ】

俯いたまま大人になった
君が思うまま手を叩け
陽の落ちる坂道を上って
僕らの影は

追いつけないまま大人になって
君のポケットに夜が咲く
口に出せなくても僕ら一つだ
それでいいだろ、もう

君の想い出を噛み締めてるだけ

いよいよクライマックスですね。
「君が思うまま手を叩け」
「君」を忘れることができず大人になってしまった「僕」を、好きに笑っておくれよ。
そして
「口に出せなくても僕ら一つだ」
やはり何かを面と向かって言えない「僕」。
今まで出てきた口をつぐむ歌詞を振り返ってみます。
該当箇所は
口に出せないなら僕は一人だ」
「それがわからないから、口を噤んだまま
口に出せないまま坂を上った」
口に出せなくても僕ら一つだ」
の4つです。
ここでは「僕」は「君」に何を伝えたかったのか。
また、何故タイトルが『ただ君に晴れ』なのか。
この謎を解く鍵はMV
ヨルシカ - ただ君に晴れ (MUSIC VIDEO) - YouTube
の2:53秒あたりに一瞬映る

         「        上空を漂う薄ら雲。

          山桜桃梅。アスファルトの焼ける匂い。

           プールサイド。蝉時雨。鳥居。夏陰

                 青天井。

           夏草をかき分けて寝転がっていた。

           東京の空には殆ど映らない青色も、

            想い出の中なら指先に届く。

               逃げ水。バス停裏。

            木製の看板。百日紅。既視感。

                  風見鶏。

          自分の物とすら思えないほどに朧げな記憶。

             子供のころ見た幽霊の輪郭。

              夜空。夏の果て。海月。

                源氏蛍。影法師。

             分かれ道。錆びた鉄棒。落陽。

           頬を撫でる温い風。雲の高さ。双眸。

                   群青。

                  夜水。靴。花火。

              木漏れ日みたいな誘蛾灯。

            追想。晩夏。夜しか眠れない僕らが。

         これから先の人生、躓くことなんて当たり前だ。

         それでも、ただ君に、晴れぬ空などないことを。 」

という文章にあります。
これは不器用な「僕」が「君」と過ごした「あの夏」を形容するのに必要な語彙と、そして「僕」が「君」に伝えたかった事が記述されています。
注目すべきは、最後の三文。
               夜しか眠れない僕らが。
         これから先の人生、躓くことなんて当たり前だ。
         それでも、ただ君に、晴れぬ空などないことを。
タイトルが『ただ君に晴れ』である理由が明らかですね。
「僕」は「君」の人生の幸せを切に願っています。
そしてこのことが
「僕」が、「君」が大切であるが故に上手く伝えられなかったことでしょう。
 
「君の想い出を噛みしめてる
 だけ」
言葉にせずとも「僕」と「君」は「僕」の中でいつでも一緒。
そして、ただ「僕」は「君」の幸せを願って彼女との思い出を噛みしめるだけだと。

 

どこまでも不器用な「僕」が、彼なりに「あの夏の君」への想いを雅に歌った曲でした!

 

【感想】

よく歌いながら手拍子を入れて楽しむのがカラオケでありがちな、再生回数一億超のヨルシカ大ヒットソング。
ですが、その歌詞の内容は実はそこまでポップなものではなかったんですね。
個人的には

      これから先の人生、躓くことなんて当たり前だ。

      それでも、ただ君に、晴れぬ空などないことを。

この二文が最高に好きです。
ただ頑張れと励ますのではなく、そっと、でも確かに力強く背中を押してくれる言い回し。
私もこういった格好の良いフレーズをサラッと言えるようになりたいものです。
また、n-bunaさんは古典や文学にも造詣が深い方なので、考察する身としては非常にやりがいがありますし、何より興味深いものがありますね。
 
それでは、今回はこの辺で筆を擱きたいと思います。
ありがとうございました!

 

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